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第6回 10/22(金)「越境するメロドラマ的想像力:帝政期ロシアのメロドラマ映画と新派映画の比較を通じて」小川佐和子(北海道大学)
メロドラマというジャンルおよび過剰な情動性をもたらすモードは、20世紀の新たな大衆娯楽である映画で、世界的にも、帝政期のロシアにおいても隆盛しました。ここでのメロドラマ映画とは、近代化に伴うさまざまな新しい変化、とりわけ危険や苦難が、本来のメロドラマ演劇における「悪役」のメタファーとして機能するという物語構造を持ちます。初期のメロドラマ映画では、革命や戦争のイデオロギーがスペクタクル性と結びつくこともあれば、都市化や産業化がショック作用を伴う「悪」として表象されることもありました。世紀末から20世紀初頭のロシア社会では、急速な、しかし遅れた近代化が不安を生み、都市化と産業化が、古い階級制度の崩壊と女性の自由の増大を引き起こしました。

本講義の前半では、帝政期ロシア映画に顕著に見られる、こうした「モダニティ」と関わるメロドラマ群を考えていきます。そこでは、女性の近代化によって登場した、経済的・性的に解放された女性イメージと抑圧された女性イメージの拮抗や、家父長制との葛藤、階級格差がもたらす犯罪といった典型的なメロドラマの主題が、日常を取り巻く物語としてスクリーンに現れました。

後半では、本公開講座の全体趣旨に即して同時代の日本映画を比較対象にし、新派映画へ視点を移していきます。帝政期ロシア映画の受容を確認し、メロドラマと同様に従来は揶揄的に「お涙頂戴もの」と呼ばれてきた新派映画の情動的な特徴を考えます。

大正時代、日本の映画会社は、ロシアの古典小説や戯曲をもとに映画を製作することがありました。これらの映画は、「旧派映画」(後の「時代劇」を指す)に対して、「新派映画」という類型にくくられます。新派映画とは、女性を封建社会の犠牲者として描いた通俗的な悲劇であり、この点で同時期のロシア映画と共通項を持っています。

日本映画史上に刻まれた新派映画は、レフ・トルストイの『復活』や『生ける屍』などロシア文芸の映画化です。前者は『カチューシャ』という邦題で1914年に、後者は1918年に日活向島が映画化しました。舞台や流行歌でも一世を風靡した『カチューシャ』人気にあやかって、映画界では『復活』の主人公ネフリュードフが、なんと日本にまでやってきてしまうという奇妙な続編および続々編も製作されました。『カチューシャ』シリーズ以後も、川口松太郎脚色・溝口健二監督の新派映画『愛怨峡』としてさらに翻案は続きます。

これらの翻案と受容をふまえて、ロシアと日本のメロドラマ的想像力の比較という観点から考察し、このような、越境性かつ諸芸術・娯楽ジャンルの文化的混淆性こそがメロドラマの特性であることを考えてゆきます。

Oct 22, 2021 06:00 PM in Osaka, Sapporo, Tokyo

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Speakers

小川 佐和子
准教授 @北海道大学大学院文学研究院