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【第6回】2022年度公開講座「溶解する帝国——ロシア帝国崩壊を境界地域から考える」
日 時:2022年5月27日(金)18:00−20:00
演 題:帝国が溶解すると何が起こるのか―—ユダヤ人の場合
講 師:鶴見 太郎(東京大学大学院総合文化研究科・准教授)
要 旨:
ユダヤ人の歴史において、ロシア帝国は暗黒時代として記憶されて久しい。連想ゲームではおそらく「ポグロム」が筆頭に上がるだろう。ポグロムとは、主にユダヤ人やその商店に対して向けられた集団的な暴力を指すロシア語である。

ロシア帝国がユダヤ人にとって、長期的な観点から総体として見て決して明るい時代でなかったのは確かだとしても、その崩壊が短期的に見て明るいものだったかというと、それは必ずしもそうではなかった。なぜなら、まさにロシア帝国が崩壊した直後に訪れた内戦期に、それまでと桁違いの規模のポグロムが吹き荒れたからである。

それは、そのあとに訪れたソ連がもっと悪かったということではない。ソ連においてポグロムはほとんど見られなかった。ホロコーストを完全に食い止められたわけではなく、特にナチスが侵入した地域では凄惨きわまりなかったとはいえ、政府としてはユダヤ人を中心とした「反ファシスト委員会」を結成し、反ユダヤ主義とも闘っていた。
問題は、ロシア帝国が崩れたことにより生じた権力の空白である。それは、それまでにロシア帝国で起こってきた様々な動きが、ある意味で自由に荒れ狂うことを許し、ユダヤ人はその波に呑まれてしまったのである。

具体的にはこうである。当時、最終的にはソ連として結実する社会主義運動がロシアで活性化していた。ボリシェヴィキはその一翼を担っていた。同時に、立憲民主政を求める自由主義運動も盛んだった。これらのいずれにもユダヤ人はかかわっていた。さらに、特に20世紀に入るころから顕在化していたナショナリスト運動は、各民族の独立やさらなる発展を目指し勢力を拡大していた。ユダヤ人自身、現在のイスラエルへとつながるシオニスト運動やユダヤ人社会主義運動であるブンドといったナショナリスト系の運動を擁していたが、ウクライナ・ナショナリズムも目立つようになり、この権力の空白の時期に短期的に国家を樹立したこともあった。

これら運動はロシア帝国という傘の下で、一部協力しつつ競い合っていた。だが、傘がなくなったとき、新しい傘を誰が持つかということをめぐって、新たに競争が生まれてしまったのである。その際に、例えばウクライナ・ナショナリストは、ウクライナでの傘を主導するだけでなく、ウクライナのユダヤ人にもその下に入ることを要求し、ボリシェヴィキの傘に入ろうとするユダヤ人を裏切り者と考える傾向が生まれた。これまで通りロシア帝国という枠組みの傘を維持しようとしたロシア・ナショナリストも同様の態度をユダヤ人に取った。帝国に分散したユダヤ人が統一した動きを取れるはずもなく、いわば主要な傘の持ち手すべてから敵視される事態になってしまったのである。

第6回はこうした話を基軸に、ユダヤ人にとってのロシア帝国について解説したい。

May 27, 2022 06:00 PM in Osaka, Sapporo, Tokyo

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