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【第1回】2022年度公開講座「溶解する帝国——ロシア帝国崩壊を境界地域から考える」
日 時:2022年5月9日(月)18:00−20:00
演 題:ロシア帝国の近代的諸改革と西部境界地域
講 師:青島 陽子(北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター・准教授)
要 旨:
日露戦争の最中に高まった革命運動によってロマノフ王朝の既存の体制は大きく揺さぶられ、帝国政府は近代的諸改革に踏み切ることになりました。1904年12月の勅令では「国家秩序の改善計画」が示され、地方自治機関の権限の拡大、司法制度の整備、検閲の緩和と並んで、非正教徒や非キリスト教徒、非ロシア人の権利を制限するような法律の再検討が目指されることになりました。さらに、1905年10月マニフェストは、「人身の不可侵、良心・言論・集会・結社の自由」の住民への付与を宣言しました。さらに、国家ドゥーマ(国会)の開設方針が出され、帝国の多様な住民を立法プロセスに参画させることになりました。

現在、こうした諸改革が帝国の凝集性にどう影響したのかについて、歴史家の間で必ずしも合意があるわけではありません。しかし帝国権力が、領内の住民に対して個々人の活動の自由の範囲を拡大し、公的な生活に関与する間口を広げたことは間違いないと言えるでしょう。各言語集団や宗教・宗派集団は、自らの文化的諸活動を活性化させ、独自の権利を公共空間で主張する機会を増やしていきました。このように、多様な住民が公共的な空間に入り込むことで、一方では多元的な帝国の凝集性を高める可能性もあったでしょう。しかし、帝国権力が第一国会、第二国会を短期間で解散したことからも分かるように、多様な主張の間の調整は簡単ではありませんでした。第三国会以降、境界地域からの諸民族代表を減らすことで国会運営の安定化を図りましたが、なお一定の議席を諸民族代表にも与え続けました。帝国権力は限定された形ではあれ諸民族との対話の回路を残したのであり、そのことは、諸民族に対して公共性への希求を喚起し続けることにもなりました。

続けて、西部境界地域を事例としつつ、信教の自由や母語教育をある程度許可したことが、境界地域の社会にどう影響したのか、お話ししたいと思います。政府が正教から他のキリスト教への改宗を認め、母語教育をある程度許可したことで、各言語・宗教集団は独自の文化コミュニティへの意識を強化することになりました。ただし、諸集団の境界線を引くことは容易ではなく、こうした傾向が行政・政治的な権利を要求する明確な集団を直ちに生み出したとは言えません。他方で、国家が非正教徒や非ロシア語集団に一定の譲歩をしたことで、境界地域ではその地域を守ろうとしてロシア・ナショナリズムが強化されることにもなりました。こうしたことが、必ずしも直接的に帝国の瓦解を招いたわけではありません。しかし、公共空間に現れた、こうした様々な文化的・政治的な要求は、戦時期には戦況を有利にするために外国勢力によって利用されることになったとも言われます。このように考えると、帝国末期の諸改革こそが、諸民族の遠心的分離を準備していたとも考えられるでしょう。

May 9, 2022 06:00 PM in Osaka, Sapporo, Tokyo

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