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【第4回】2022年度公開講座「溶解する帝国——ロシア帝国崩壊を境界地域から考える」
日 時:2022年5月20日(金)18:00−20:00
演 題:コーカサス・ムスリムのディアスポラと二つの帝国の解体
講 師:野坂 潤子(ビルケント大学経済学・社会科学学部 博士課程)
要 旨:
【ロシア帝国によるコーカサス併合とムスリム・ディアスポラの発生】
 この講座では、ロシア帝国が黒海北岸とコーカサス全域を併合する過程で、多くのムスリムが移民として故郷を離れ、オスマン帝国各地に移住することになった歴史的経緯と、その結果として発生したディアスポラ(移民コミュニティ)が、ロシア帝国とオスマン帝国という二つの帝国の解体において、どのような役割を果たしたかについて考察します。
 1856年のクリミア戦争の終結後、クリミア・タタール人を皮切りに、北コーカサス及び黒海北岸から対岸のオスマン帝国へのムスリムの移住が始まりましたが、特に、重要なのは、1864年のロシア帝国によるコーカサス併合の完了後に、クバン川右岸の黒海沿岸地域に住むアディゲ人(英語ではサーカシア人またトルコ語ではチェルケス人)が数十万人もの規模で移住した事件です。その後も、1876-1877年の露土戦争後に、やはりコーカサス地域の多数のムスリムが難民化し、移住を余儀なくされました。19世紀の後半に起こったこの一連のコーカサス・ムスリムの移民・難民問題は、当時のヨーロッパの各国において、勃興したばかりのジャーナリズムで盛んに取り上げられ、非常にポピュラーなトピックになりました。さらに、こうしたムスリム難民への支援は、しばしば、英国やポーランドにおいて、ロシア帝国の支配に反対・抵抗する勢力を中心に行われました。この問題は、当時の国際関係における重要な懸案の一つだったのです。

【統合されるムスリムとディアスポラのムスリム】
 ロシア帝国に併合されたコーカサス地域では、安定した統治制度の確立が模索され、ムスリム住民が多くを占める地域では、既存のカーディー(イスラーム法に基づく裁判官)を官僚として登用するなど、ムスリム・コミュニテイの事情に沿った政策も行われました。また、一部のムスリムが帝国の首都で教育を受け、高位の軍人や文官として勤務する例も少数ながらありました。こうした統合を目指した政策は、一定程度の効果を持っていたと考えられます。しかし、帝国の外のディアスポラの存在とその帰還運動は、ロシア帝国にとって政治的な不安定要因であり続けました。
 他方、コーカサスからの大量のムスリム移民は、受け入れ先のオスマン帝国において、従来の住民構成を大きく変え、オスマン帝国の解体に至る要因の一つになっていったのです。彼らは、移住先の地において、現地住民に同化しようとせず、元々の文化・習慣を保持して、独自のコミュニティを形成しましたが、その存在は、トルコ共和国成立後の国民統合にとっても、一時脅威となりました。

【二つの帝国と越境するムスリム】
 黒海を挟んで北と南に分かれたコーカサス・ムスリムは、必ずしも常に相互の紐帯を保持していたわけではありませんでしたが、ロシア帝政末期の革命運動やその後の内戦期においては、その繋がりを活用しようとしました。例えば、対ロシア抵抗戦争のシンボルであったイマーム・シャミールの孫でイスタンブール生まれのサイド・シャミールは、北コーカサスの反革命勢力にリーダーとして招かれてボリシェビキと戦いました。ディアスポラの存在が、帝国解体の遠心力として働いた例と言えるでしょう。

May 20, 2022 06:00 PM in Osaka, Sapporo, Tokyo

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