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第2回 10/8(金)「「救国の妓女」幻想:中国におけるメロドラマの系譜」田村容子(北海道大学)
【メロドラマと中国演劇】
 この講義では、20世紀の中国伝統劇が、いかに外来の影響を受けて様式の上で変化したのか、そして表現される劇の内容もまた、時代に合わせていかなる変貌を遂げたのかを見ていきます。
 「メロドラマ」の特徴として、しばしば劇的効果を高めるための伴奏音楽や、類型化された登場人物を用いることが指摘されます。人物の感情を音楽にのせて表現するメロドラマの形式は、じつは中国の伝統劇とも親和性が高いといえるでしょう。
 19世紀から20世紀にかけて隆盛した中国の伝統劇である京劇は、歌唱と伴奏の入った音楽劇です。俳優は、型のある演技を通して人物を表現しますが、その役柄は類型化されており、善玉・悪玉などが扮装によってわかりやすく示されます。

【「救国の妓女」と『椿姫』】
 キーワードとなる「救国の妓女」とは、中国のメロドラマの系譜をたどるとき、幾度となく浮かび上がってくるヒロインのイメージです。たとえば、1909年に上演された『二十世紀新茶花』という作品では、苦界に身を沈めた妓女の新茶花が、若き将校・陳少美との仲を陳の父に引き裂かれた後、敵軍の元帥から地図を盗み出して陳に軍功を与え、結ばれるという筋書きが演じられました。
 ヒロインの「新茶花」は、1899年に中国で翻訳された『巴黎茶花女遺事』、すなわち『椿姫』の影響下に生まれたキャラクターです。中華民国成立という現実のドラマとリンクし、革命、ジャーナリズム、メロドラマ、西洋式劇場、新式舞台装置、伝統劇の筋立てといった各種の要素を結合したこの演目は、『椿姫』の翻訳劇をしのぐ人気を博し、ローカル化された自由恋愛の物語という側面もそなえていました。

【「妓女」イメージの反転と変遷】
 中国文学において、「妓女」という言葉には、国を亡ぼすイメージがつきまとってきました。晩唐の詩人・杜牧の七言詩「秦淮に泊す」に、「商女は知らず亡国の恨み 江を隔てて猶お唱う後庭花」という有名な句があります。この詩は、亡国の曲をそれと知らずに歌い興じる「商女」、すなわち妓女の姿を詠んだものとして、国家の存亡と妓女を対置するひとつの典型となり、後世においてもしばしば引用されました。
 やがて「亡国」のイメージを反転させた、「救国の妓女」という像が作り出されます。20世紀以降の中国において、『椿姫』や「新茶花」のように、伝統的な家父長制度との間に葛藤をもたらす女性像と、国家のアイデンティティがどのように結びつけられ、メロドラマを作り上げてきたのか、さまざまな作品から読み解いてみたいと思います。

Oct 8, 2021 06:00 PM in Osaka, Sapporo, Tokyo

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Speakers

田村 容子
准教授 @北海道大学大学院文学研究院