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第3回 10/11(月)「バレエ『白鳥の湖』 悲劇からメロドラマへ」斎藤慶子(上智大学/日本学術振興会)
バレエの代表的作品といえば?と聞かれたら、『白鳥の湖』を思い浮かべる人は少なくないのではないでしょうか。チャイコフスキーの有名な曲に合わせて展開される美しい踊りの数々は、19世紀末ロシアにおける誕生から現代に至るまで、観客の心を惹きつけてやみません。オデット姫とジークフリード王子が愛の力で悪魔ロットバルトの呪いを破り、二人は幸せに結ばれる、というまさにメロドラマティックなストーリーは、多くの観客がもっともよく知っているものでしょう。しかしながら、現在観ているのはあくまでもソ連時代の変革を経たあとの姿でしかありません。本講義では、もとは主人公たちが湖に身を投げるという悲劇的な結末だった『白鳥の湖』がメロドラマに成り代わった過程をご紹介します。

帝政時代には皇帝を頂点とする封建的な社会体制を維持していたロシアは、1917年の革命を経て労働者を中心とする体制に生まれ変わります。ソ連時代の文化には、新しい社会を支える新しい人民を育てるという使命が課されました。その際、物事の善悪をはっきりと示すというメロドラマのひとつの特徴が有用となりました。バレエの分野も無縁ではなく、新しい作品ばかりか、『白鳥の湖』のような古典作品にも大胆な改定が加えられていきました。ストーリーラインにおいて社会主義的な側面が反映されただけでなく、踊り方やマイム、主人公たちの人物造形にもその範囲はおよびました。ロットバルトの娘オディールが発狂するというメロドラマ映画の影響がうかがえるような改作もあれば(1920年、ゴルスキー振付)、ジークフリードの思慕の対象がオデット姫ではなく動物の白鳥そのものであるという(1933年、ワガノワ振付)、今では驚いてしまうような演出も20世紀の前半に登場していました。

『白鳥の湖』の改作は20世紀半ばには全国規模で展開され、様々な試みが行われました。じつは、日本で上演されている『白鳥の湖』にも少なからずその影響は及んでいます。ソ連の専門家が日本で初めて『白鳥の湖』全幕上演を行った事例として、1963年のチャイコフスキー記念東京バレエ学校の公演が挙げられますが、これはまさにソ連の20世紀半ばの成果が日本にもたらされたものでした。本講義では、その後日本独自の美学と絡み合いながら、ソ連の『白鳥の湖』の演出の一部が継承されている可能性がうかがわれる例について最後に言及したいと思います。

Oct 11, 2021 06:00 PM in Osaka, Sapporo, Tokyo

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Speakers

斎藤 慶子
特別研究員 @上智大学外国語学部/日本学術振興会